『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』の概要
筆者:高橋祥子氏
出版社:NewsPicksパブリッシング
ページ数:232ページ
ジャンル:ビジネス書
あらすじ
「生命原則を客観的に理解した上で主観を活かす思考法」を本書では書いていきます。
高橋祥子. ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考 (p.7). Kindle 版.
本書は、生命科学の研究者でもある筆者が、種が生存するうえで重視していること=生命原則を客観的に理解した上で、個が生存するために重視していること=主観を活かす思考法、について解説している書籍である。
- そもそも生命原則とはなにか?
- 生命原則に主体的に抗うには?
- それらを踏まえて、人生、組織・経営、未来について、どのように考えるか?
について、詳細なポイントを解説している。
レビュー(ピックアップ)
ネガティブ
- 当たり前といえば当たり前の内容で、新しい発見は少なかった
- 文章が冗長で、まどろっこしく感じた
ポジティブ
- 生命という大きな視点から人間やビジネスについて論じた本で、大きな学びがあった
- 生命科学者と人生を紐づけ、生きる素晴らしさと考え方を変えてくれる良書だった
評価
生命科学とビジネス・人生を紐づけるという、他の書籍にはない斬新な切り口を持つ本書。
他のビジネス書で読んだことのある内容も散見されるが、「この事象はこういう切り口でも説明できるのね」という発見もあった。
遺伝子の説明や動的平衡などの話が合間にあり、理系の分野にアレルギーがある方は読みづらいかもしれない。
この本をお勧めしたい人
- 企業や組織の経営者、マネジメント:組織の成長や進化、不確実な環境下での意思決定、多様性の捉え方、長期的な生存戦略などについて、新しい観点が得られるかもしれない
- 日々感じる悩みや葛藤、不安などの「人間らしい」課題に直面している人:「人間らしい」課題を、生命科学の観点から捉え直し、解決の糸口を得られるかもしれない
この本をお勧めできない人
- 生物学的な視点や生命科学の知見に興味がない方:本書を通じて、生命原則をもとに様々な課題を紐解いているため、この分野に興味関心がないと、読むことは難しい可能性がある
『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』の要約
第1章 生命に共通する原則とは何か -客観的に捉えるー
要約・まとめ
死や感情、視野の狭さといった、人間にとって非効率に感じられる生物の様々な性質は、生物が個体として生き残り、種を繁栄させるという根本的な原則(=生命原則)と密接につながっています。
生命原則を理解することで、物事を広い視野(時間的・空間的)で捉え直す力が得られます。これは、一見複雑に見える問題の本質を見抜き、解決の糸口を見つける助けとなります。
明日への学び
- 物事を考える際に、意識的に「時間的」・「空間的」な視野を広く設定し、全体や長い時間軸で捉え直すこと。これにより、目の前の狭い問題(「鶏と卵」など)に捉われず、本質を見抜く力 が養われる
- 客観的な情報だけでなく、自身の「なぜ?」 という問いや「やりたい」 という主観的な意志も大切にし、行動の推進力とすること。不確実な世界で、自身の主観が羅針盤となる
自分事に落とし込む
広い視野を持とうとすると、いろいろな人の思いや願いを込めようとしてしまい、自分自身の主観的な思いを疎かにしてしまう。最近はそのようなことが多く、自分自身を疲弊させる原因となっているように省みた。両立させるという思いを持つことから、まずは始めたい。
第2章 生命原則に抗い、自由に生きる -主観を活かすー
要約・まとめ
生命の原則(個体の生存・種の繁栄など)にただ従うのではなく、それに意識的に抗い、自身の主観的な意志を活かして行動することが重要性す。思考や行動は生物的には非効率ですが、それこそが自らの希望を見出し、自由に生きるための唯一の道です。客観的な生命原則の理解と、主観的な意志に基づいた行動の両輪が、不確実な世界でより良い未来を創る力となるのです。
明日への学び
- 結果がどうなろうとも後悔しないと事前に決め抜く「覚悟」は、不確実な未来に対する心の「碇」となり、葛藤を減らし、物事に毅然と立ち向かう力になる
- 現状と理想の未来との「差分」を認識することが行動のきっかけとなり、実際に行動を起こすことが「情熱」を生み出す。情熱は行動から生まれる
自分事に落とし込む
覚悟と情熱。どちらもリーダーには超大切なこと。私も、メンバーに覚悟と情熱を見せられているか。大切にしたい。
第3章 一度きりの人生をどう生きるか -個人への応用ー
要約・まとめ
生命原則や視野設定の考え方は、個人の人生にどう応用できるのか? 不確実な未来への「覚悟」や、自身の「主観」を見つけ活かすことの重要性、そして思考・行動によって自身の人生を切り拓く意義について述べ、読者が生きる意味や悩みを考える上でのヒントを提供します。
明日への学び
- 「努力」をポジティブに捉え、意図的にエネルギーを消費する。努力とは、無秩序化(エントロピー増大)に抗い、放置状態を避けるためにエネルギーを使う行為。限られたエネルギーをどこにどう使うか を自身の意志で選び、意図的に努力することの重要性を認識する
- 感情や直感に基づく「生物的」な自分と、科学的知識に基づいた「科学的」な自分が存在することを理解し、感情だけに流されず、客観的な情報も踏まえて判断する。特に不確実性の高い状況では、客観情報と主観的な判断の両方が重要である
自分事に落とし込む
人はほうっておくと、エントロピーが増大していくというのは、経験則的にもそのとおりだな、と。それに抗うことが努力であり、その努力を引き続き行っていく勇気を得られた。
第4章 予測不能な未来へ向け組織を存続させるには -経営・ビジネスへの応用ー
要約・まとめ
これまでの生命原則や主観を活かす思考法といった議論を、本章では組織や企業経営の場に応用します。
多様性の本質を単なる差異ではなく共通の目的を前提としたものと捉え直すこと、不確実な環境での意思決定において客観的な情報と主観的な判断の両方が重要であること、そして失敗を許容し試行錯誤を続ける「失敗許容主義」 など、生命のアナロジーから企業が持続的に発展するためのヒントを探ります
明日への学び
- 物理法則(エントロピー増大則)によれば、何もしなければ無秩序に向かいます。個人も組織も、自身の形や目標を維持・達成するためには、エネルギーを消費する「努力」が必要。限られた時間やエネルギーを、自分が「何に向かって」意図的に投じるのか、明確な意志を持つことが大切です。
自分事に落とし込む
第3章と同じところが、個人的には大切なところだと感じた。
エントロピー増大に抗うことは時として、煙たがられることも多い。が、エントロピー増大に身を委ねることは楽なことであり、それに抗うことが生物としても組織人としても大切なのだと受け取った。
第5章 生命としての人類はどう未来を生きるのか
要約・まとめ
遺伝子やミームといった「創造主」の専制に抗い、単に生物的な本能に流されるのではなく、生命原則を客観的に理解し、主観的な意志をもって思考・行動し続けることが何よりも重要。
不確実な未来で、課題解決を通じて自らより良い未来を創造する主体的努力こそが人類の希望なのです。
明日への学び
- テクノロジーそのものでなく「システム全体」を見る視点を持つ事が重要。AIやゲノム編集などの技術は急速に発展するが、これらは良い方向にも悪い方向にも使える。技術にだけ着目する「思考停止」に陥らず、その技術を含む私たちの社会がどうあるべきかというシステム全体を俯瞰して考えねばならない
自分事に落とし込む
AIにも当てはまる。AIというテクノロジー技術のみに着目するのではなく、それを使うことで自社は、ひいては社会はどうなるべきかを考えながら、日々の業務に当たりたい。